ホームページに戻る
目次に戻る


アイヌ語新聞「アイヌタイムズ」の記事「ウペウ」
(第32号、2004年(平成16年)12月29日(水)アイヌ語ペンクラブ発行 5〜10ページ引用)
(第33号日本語版、2005年(平成17年)3月 30日(水 )アイヌ語ペンクラブ発行 2〜3 ページ引用) 

ウペウ
 

(アイヌ語)
upew
ウペウ

[Esperanto]
 



この文は、Shift_JIS X0213 のフォントを指定していません。

このページを表示させるには、Windows Me以前のシステムでのNetscape 3.x や 4.x azur(azurはWindows98以上)Mac OS 9.2以前のシステムでのNetscape 3.x や 4.x iCabをお使いになり、Shift_JIS X0213 のフォントを指定してください。

WindowsXPMacOSXでは、azurを使うと、ユニコード3.2に準拠しているフォントを指定することによって、このShift_JIS X0213 に準拠したWebページを表示させることができます。
また、MacOS X ver10.4.11でダウンロードされるSafari ver.3.0.4 を用いると、表示→テキストエンコーディング→日本語(Shift JIS X0213)というエンコーディングが機能するようになりました。Unicode 3.2 に対応しているフォントで表示されます。MacOS X ver10.3 以前でダウンロードできるSafari ver.1.1では、Safari→環境設定→テキストエンコーディング→日本語(Shift JIS X0213)というエンコーディングが選択できましたが、機能してませんでした。

ソースを編集する時は、Alpha for WindowsXP (http://www.interq.or.jp/student/exeal/dss/res/alpha/) や Netscape Composer 4.78 for WindowsMe や テキストエディット for MacOSXをお使いください。


ウペウは、セリ科植物の根です。その根は、強い臭気を有し、風邪、腹痛があると、薬にされました。

(アイヌ語)
upew anakne serika-syokubutu sinrici ne. sinrici hura ruy wa, omkekar ka honarka ka an kor kusuri ne a=kar ruwe ne.
ウペウ アナネ セリ科植物 シンリチ ネ。シンリチ フラ ルイ ワ、オケカ カ ホナカ カ アン コ クスリ ネ アカ ルウェ ネ。

[Esperanto]
 
 

強い臭気を発するため、病魔がいやがると思われました。小屋に吊るしたりしました。犬の首からぶら下げたりしました。

(アイヌ語)
hura ruy pe ne kusu payoka-kamuy emaka sekor yaynu=an ruwe ne. pon cise or ta a=atte ka ki, seta rekuci orowa a=racitkere lka ki ruwe ne.
フラ ルイ ペ ネ クス パヨカカムイ エマカ セコ ヤイヌアン ルウェ ネ。ポン チセ オ タ アアッテ カ キ、セタ レクチ オロワ アラチッケレ ルカ キ ルウェ ネ。

[Esperanto]
 
 

織田ステノさんは、次のように言っています:「ウーペウはイワニンジンとシャモたちは言っていた。イーワニンジンがあったら、おかゆに入れた。その匂い(あったが)、食べたらおいしいものらしい。フチたちは、小さい時は食べさせられても、何を食ってもうまいなあと思って食べたもんだ。。。。ウーペウだってkamuy-kar-kusuri だといって、フチたちは少し風邪気味なら、お湯を沸かして、ウーペウとともに煎じて飲んだ。エカシたちにも飲ましたのを小さい時に見た事がある。」と言いました。(アイヌ民俗文化財調査報告書(アイヌ民俗調査IV)、北海道教育委員会、1984、p77)

(アイヌ語)
ORITA Suteno huci ene hawean hi; "upew iwaninzin ne sekor samo utar ye hawe ne. iwaninzin an kor, sayo or a=omare. hura at korka, a=e kor keraan pe ne yak a=ye. huci utar, pon hi ta nep a=ere yakka keraan kuni ramu kor e ruwe ne... upew ne yakka kamuy-kar-kusuri ne sekor hawean kor, huci utar ponno omkekar humas kor, wakka su or omare wa popte hine, upew tura popte wa ku. ekasi utar ka kure siri ku=pon hi ta ku=nukar amkir." sekor hawean.
織田ステノ フチ エネ ハウェアン ヒ; "ウペウ イワニンジン ネ セコ サモ ウタ イェ ハウェ ネ。イワニンジン アン コ、サヨ オ アオマレ。フラ アッ コカ、アエ コ ケラーン ペ ネ ヤ アイェ。フチ ウタ、ポン ヒ タ ネ アエレ ヤッカ ケラアン クニ ラム コ エ ルウェ ネ... ウペウ ネ ヤッカ カムイ-カ-クスリ ネ セコ ハウェアン コ、フチ ウタ ポンノ オケカ フマ コ、ワッカ ス オ オマレ ワ ポテ ヒネ、ウペウ トゥラ ポテ ワ ク。エカシ ウタ カ クレ シリ クポン ヒ タ クヌカ アキ。" セコ ハウェアン。

[Esperanto]
 
 

田畑アキさんは、次のように言っています:「ウペウ掘って、きれいに洗って干します。赤ん坊が夜泣きしたら、そのウペウをかじりながら、家の隅に何度も息を吹き掛けます。その後その赤ちゃんがどうなるかなと思って見ると、泣きません(泣かなくなります)。どのように言葉を言いながら息を吹きかけたかわかりません。」(アイヌ生活誌、(財)アイヌ無形文化伝承保存会、1984、p31)

(アイヌ語)
TABATA Aki huci ene hawean hi; "upew a=ta hine pirkano a=huraye wa a=sakte. poyson kunnecis kor, a=kuykuy kor, cise sowsutu a=ewarewar pa ruwe ne. okake ta ne poyson makanak an ya sekor ku=yaynu wa ku=nukar kor, somo cis. makanak itak a=ye kor a=ewarewar pe ne ya ka k=eramiskari." sekor hawean.
田畑アキ フチ エネ ハウェアン ヒ; "ウペウ アタ ヒネ ピカノ アフライェ ワ アサテ。ポイソン クンネチ コ、アクイクイ コ、チセ ソウストゥ アエワレワ パ ルウェ ネ。オカケ タ ネ ポイソン マカナ アン ヤ セコ クヤイヌ ワ クヌカ コ、ソモ チ。マカナ イタ アイェ コ アエワレワ ペ ネ ヤ カ ケラミカリ。" セコ ハウェアン。

[Esperanto]
 
 

松永たけさんは、次のように言ってます:「カシキするときに使う。アシンニフッチ、アパカムイのとこでカシキして、それからウペウ(=カラフトニンジン)でもって顔洗わせる。ウペウは、煮出さなくても水に入れただけでいい。朝鮮人参みたいな匂いがする。」と言いました。(アイヌと植物(薬用編)、(財)アイヌ民族博物館、2004、p4)

(アイヌ語)
MATUNAGA Take katkemat ene hawean hi: "kasi a=kik hi ta a=ewanke. asinni huci, apa kamuy or ta kasi a=kik hine, orowano upew (=Karahuto-ninzin) ani a=ewonnere. upew a=popte somo ki no wakka or a=omare patek ne yakka pirka. Ty郭en-ninzin neno an hura at pe ne ruwe ne." sekor hawean.
松永たけ カッケマッ エネ ハウェアン ヒ: "カシ アキ ヒ タ アエワンケ。アシンニ フチ、アパ カムイ オ タ カシ アキ ヒネ、オロワノ ウペウ (カラフトニンジン) アニ アエウォンネレ。ウペウ アポテ ソモ キ ノ ワッカ オ アオマレ パテ ネ ヤッカ ピカ。朝鮮人参 ネノ アン フラ アッ ペ ネ ルウェ ネ。" セコ ハウェアン。

[Esperanto]
 
 

知里真志保は、ウペウは、「イブキボウフウ」であると言いました。学名は、Seseli libanotis var. japonica です。多くの研究者は、ウペウは「イブキボウフウ」であると言いました。

(アイヌ語)
TIRI Masiho upew ibukibouh ne sekor hawean. gakumei anakne "Seseli libanotis var. japonica" ne. upew ibukibouh ne sekor inne kenky尽ya utar haweoka.
知里真志保 ウペウ イブキボウフウ ネ セコ ハウェアン。学名 アナネ "Seseli libanotis var. japonica" ネ。ウペウ イブキボウフウ ネ セコ インネ 研究者 ウタ ハウェオカ。

[Esperanto]
 
 

しかし、胆振・日高地方では、「ウペウ」は「イワニンジン」であると言われる所もあります。「イワニンジン」は、Angelica hakonensis Maxim. (セリ科)という学名があります。「hakonensis」のハコネは本州の箱根なので、箱根付近の山地(の岩石地)に生えるものであり、北海道にはないものです。したがって、本当は「イワニンジン」と名付けるのはウソであり、本当の和名ではありません。

(アイヌ語)
korka, Iburi, Hidaka or ta, upew anak iwaninzin ne sekor a=ye hi ka an. Iwaninzin anak "Angelica hakonensis Maxim." sekor gakumei an. "hakonensis" or un "Hakone" ne kusu, Hakone or un iwa ka us pe ne wa, aynumosir (Hokkaid) or ta isam pe ne. kusu, anpe anakne "iwaninzin" sekor a=rekore hi sunke ne wa, sino wamei (sisam rehe) ka somo ne.
コカ、胆振、日高 オ タ、ウペウ アナ イワニンジン ネ セコ アイェ ヒ カ アン。イワニンジン アナ "Angelica hakonensis Maxim." セコ 学名 アン。"hakonensis" オ ウン "ハコネ" ネ クス、箱根 オ ウン イワ カ ウ ペ ネ ワ、アイヌモシ (北海道) オ タ イサ ペ ネ。クス、アンペ アナネ "イワニンジン" セコ アレコレ ヒ スンケ ネ ワ、シノ 和名 (シサ レヘ) カ ソモ ネ。

[Esperanto]
 
 

アイヌ民族博物館研究報告第8号の中で、北海道立衛生研究所の姉帯正樹氏は、以下のように言っています:「白老町の野本家、松永家、岡田家が「イワニンジン」とそれぞれ考えていたものを調べたところ、その形により、カラフトニンジン Conioselinum kamtschaticum Rupr. の根であることがわかりました。」と言いました。

(アイヌ語)
Ainuminzokuhakubutukan-kenky辛oukoku-dai8g or ta Hokkaidoritu-eiseikenky諏yo or un ANETAI Masaki nispa ene hawean i: "Siraw-o-i (Siraoi) maciya or un NOMOTO utari neya, MATUNAGA utari neya, OKADA utari neya, "iwaninzin" ne kuni ramu a p ku=nukar kor, katuhu ani "Karahuto-ninzin (Conioselinum kamtschaticum Rupr.)" sinrici ne hi k=eraman ruwe ne." sekor hawean.
アイヌ民族博物館研究報告第8号 オ タ 北海道立衛生研究所 オ ウン 姉帯正樹 ニパ エネ ハウェアン イ: "シラウ-オ-イ (白老) マチヤ オ ウン 野本 ウタリ ネヤ、松永 ウタリ ネヤ、岡田 ウタリ ネヤ、"イワニンジン" ネ クニ ラム ア クヌカ コ、カトゥフ アニ "カラフトニンジン (Conioselinum kamtschaticum Rupr.)" シンリチ ネ ヒ ケラマン ルウェ ネ。" セコ ハウェアン。

[Esperanto]
 
 

平取町貫気別の黒川家で植栽しているウペウも「イワニンジン」と言われてます。姉帯氏は、以下のように言ってます:「これは、その形により、センキュウ Cnidium officinale Makino (セリ科) であることがわかりました。センキュウは、寛永の頃に大陸から長崎に運ばれたと言われています。明治から大正まで、和人が本州から持ち込み、「イワニンジン」という名を付けたのだろうと考えられます。」と言いました。

(アイヌ語)
Piratur (Biratori) un Nupki-pet (Nukibetu) or un KUROKAWA utari or ta etoyta upew ka "iwaninzin" ne sekor a=ye. ANETAI nispa ene hawean hi: "newaanpe katuhu ani 'senky (Cnidium officinale [seri-ka])' ne hi k=eraman ruwe ne. senky anak kusuri ne a=kar pe ne wa, Kan'ei-zidai or ta tairiku or wa Nagasaki or un atuy tomotuye wa a=rura p ne yak a=ye. Meizi wano Taisy pakno, Honsy or wa sisam kor wa ek hine, "iwaninzin" sekor a=rekore nankor sekor yaynu=an ruwe ne." sekor hawean.
ピラトゥ (平取) ウン ヌキ-ペッ (貫気別) オ ウン 黒川 ウタリ オ タ エトイタ ウペウ カ "イワニンジン" ネ セコ アイェ。姉帯 ニパ エネ ハウェアン ヒ: "ネワアンペ カトゥフ アニ センキュウ (Cnidium officinale [セリ科]) ネ ヒ ケラマン ルウェ ネ。センキュウ アナ クスリ ネ アカ ペ ネ ワ、寛永時代 オ タ 大陸 オ ワ 長崎 オ ウン アトゥイ トモトゥイェ ワ アルラ ネ ヤ アイェ。明治 ワノ 大正 パノ、本州 オ ワ シサ コ ワ エ ヒネ、"イワニンジン" セコ アレコレ ナンコ セコ ヤイヌアン ルウェ ネ。" セコ ハウェアン。

[Esperanto]
 
 

浦河町字姉茶の遠山サキさんは「キムンウペウはイワニンジンと言われるものです。」と言いました。しかし、姉帯氏は、以下のように言ってます:「これは、その形により、ホソバトウキ Angelica stenoloba Kitagawa (セリ科) であることがわかりました。この根は生薬では、当帰(トウキ)と呼ばれるものです。当帰(トウキ)は、精油を含み、それで人の体を温めるために薬にされます。」と言いました。

(アイヌ語)
Pon-nay-putu (Urakawa) maciya or un TjYAMA Saki katkemat "kimun'upew anak iwaninzin sekor re an pe ne." sekor hawean. korka ANETAI nispa ene hawean hi: "ne waanpe nokaha ani hosobat殻i (Angelica stenoloba Kitagawa [seri-ka]) ne hi k=eraman ruwe ne. sinrici anakne sy楽aku or ta t殻i sekor a=ye p ne ruwe ne. t殻i anak oro un seiyu an pe ne wa, ani a=netopake a=popkere kuni kusuri ne a=kar ruwe ne." sekor hawean.
ポン-ナイ-プトゥ (浦河) マチヤ オ ウン 遠山サキ カッケマッ "キムンウペウ アナ イワニンジン セコ レ アン ペ ネ。" セコ ハウェアン。コカ 姉帯 ニパ エネ ハウェアン ヒ: "ネ ワアンペ ノカハ アニ ホソバトウキ (Angelica stenoloba Kitagawa [セリ科]) ネ ヒ ケラマン ルウェ ネ。シンリチ アナネ 生薬 オ タ 当帰(トウキ) セコ アイェ ネ ルウェ ネ。当帰 アナ オロ ウン 精油 アン ペ ネ ワ、アニ アネトパケ アポケレ クニ クスリ ネ アカ ルウェ ネ。" セコ ハウェアン。

[Esperanto]
 
 

遠山サキさんは、次のように言ってます:「キムンウペウ(=ホソバトウキ)は、体がだるかったり風邪をひいたりお腹の具合が悪かったりすると煎じて飲んだ。他の草も混ぜて煎じることもあった。」と言いました。(アイヌと植物(薬用編)、(財)アイヌ民族博物館、2004、p5)

(アイヌ語)
TjYAMA Saki katkemat ene hawean hi: "kimun'upew (=hosobat殻i), sinki=an ka omkekar=an ka a=honi wen ka ki kor a=popte wa a=ku ruwe ne. oya kina a=kopoye wa a=popte hi ka an ruwe ne." sekor hawean.
遠山サキ カッケマッ エネ ハウェアン ヒ: "キムンウペウ (ホソバトウキ)、シンキアン カ オケカラン カ アホニ ウェン カ キ コ アポテ ワ アク ルウェ ネ。オヤ キナ アコポイェ ワ アポテ ヒ カ アン ルウェ ネ。" セコ ハウェアン。

[Esperanto]
 
 

センキュウは、当帰(トウキ)に似た薬効があります。黒川セツさんは、「イワニンジンは、風邪ひいた時などに煎じて飲む。イワニンジンは、ウペウ(=センキュウ)のこと。」(アイヌと植物(薬用編)、(財)アイヌ民族博物館、2004、p5)

(アイヌ語)
senky anak t殻i neno an yakkou an ruwe ne. KUROKAWA Setu katkemat "iwaninzin, omkekar=an kor a=popte wa a=ku ruwe ne. iwaninzin anak upew (=senky) ne ruwe ne." sekor hawean.
センキュウ アナ 当帰(トウキ) ネノ アン 薬効 アン ルウェ ネ。黒川セツ カッケマッ "イワニンジン、オケカラン コ アポテ ワ アク ルウェ ネ。イワニンジン アナ ウペウ (センキュウ) ネ ルウェ ネ。" セコ ハウェアン。

[Esperanto]
 
 

このように、アイヌ語で「ウペウ」という名のものは、日本においてたくさん学名があって、いろんな村でいろんな「ウペウ」があるのです。

(アイヌ語)
tap neno, aynu itak ani "upew" sekor re an pe anakne, sisam or ta poronno gakumei an wa, usa kotan or ta usa "upew" an ruwe ne.
タ ネノ、アイヌ イタ アニ "ウペウ" セコ レ アン ペ アナネ、シサ オ タ ポロンノ 学名 アン ワ、ウサ コタン オ タ ウサ "ウペウ" アン ルウェ ネ。

[Esperanto]
 



目次に戻る

ホームページに戻る